東宝/カラー・東宝スコープ(ワイド)/88分
昭和32年12月28日公開
(同時上映「サザエさんの青春」)
「初の空想科学映画に」
本多猪四郎
「地球防衛軍」は、これまでの「ゴジラ」や「ラドン」よりも数倍スケールが大きく、一そう本格的な空想科学映画として企画している。従って新しい特殊技術の領域を拡げ、それに対して戦いを挑むことに努力を傾注する積りである。いいかえれば、映画史上、最も特殊技術の真面目を発揮した作品とし、最もスケールの大きい空想科学映画にしたいと考えている。それとともに「地球防衛軍」には東西両陣営という意識を払拭して、全人類が一つになって平和な生活を造りたいという、世界の素朴な願望を映画の底流として織りこみたいとも考えている。
(東宝スタジオ・メール No.512より)
(解説)
――若き天体物理学者・白石亮一が研究を続けていた富士山麓の小さな村で奇怪な山火事が起こり、さらに大規模な陥没で村全体が地中に呑み込まれてしまった。だが、それらの異変は次なる大事件の前触れに過ぎなかった。白石の友人・渥美譲治と二人の師である中央天文台の安達博士は、残された白石の報告書から、かつて火星と木星の間にあったと考えられる謎の惑星ミステロイドの存在と、月の裏側で何らかの科学的な現象が起きていることを知る。
10万年以上も前に高度な文明を誇っていたミステロイドの人類は、原子兵器を使った戦争によって母星を粉々に破壊してしまい、生存を賭けて火星に脱出。その子孫であるミステリアンは、地球を安住の地とすべく富士山麓の地下に巨大なドーム基地を建設して人類に挑戦してきたのだ!
海軍の技術士官から探偵小説作家となり、航空自衛隊のテスト・パイロットも務めた日本SFの草分けの一人、丘美丈二郎の原作による本格SF映画。強力な熱線を放射するミステリアン・ドームやロボット怪獣モゲラなど圧倒的な科学力を持つ侵略者に対して、人類一丸となり、空中戦艦アルファー号、ベーター号、熱線を吸収して敵に反撃を加える光線兵器マーカライト・ファープといったスーパー・メカニックを繰り出す防衛軍の攻防戦を描いた一大スペクタクルで、東宝特撮映画としては初となるワイドスクリーン(シネマスコープ)を生かした円谷英二のパノラミックな特撮演出が見もの。同時に、脚本の木村武と本多監督は『ゴジラ』以来の東宝SFのテーマである、人類とその科学が進むべき未来への願いをミステリアンの運命と対比させて描いている。
モゲラから避難する鉄橋のロケシーンで、渥美譲治役の佐原健二らと打ち合わせ中の本多監督
誘拐された女性たちのいるミステリアン・ドームの一室のセットにて、白石の妹・江津子を演じた白川由美らと
ミステリアン・ドームに招かれる安達博士役の志村喬らキャストとエキストラの記念撮影
(写真をクリックすると拡大写真が見られます。)
江津子(白川由美)がミステリアンに誘拐されるシーンのセットにて
出演
佐原健二
白川由美
河内桃子
平田昭彦
志村喬
藤田進
土屋嘉男
伊藤久哉
小杉義男
山田巳之助
中村哲
大川平八郎
笈川武夫
ジョージ・ファーネス
ハロルド・エス・コンウェイ
加藤春哉
大村千吉
佐田豊
三原秀夫
三條利喜江
今泉廉
大友伸
中丸忠雄
中島春雄
手塚勝巳
他
白石亮一役の平田昭彦、その恋人・広子を演じた河内桃子を演出中。厳しい表情が印象的だ
防衛対策本部のセットでの演出風景。人物が隅々まで配置され、緊迫感とリアリティを高めている
ドームへの総攻撃が開始され、爆風と衝撃で監視所が崩れるシーンの演出風景