東京の人さようなら / People of Tokyo, Goodbye

東京の人さようなら スチル

1956年
東宝/モノクロ・スタンダード/61分
昭和31年6月28日公開
(同時上映「与太者と若旦那」)

(解説)
──椿の名産地、伊豆大島。あんこ娘の千代は久しぶりに東京から来た幼なじみの信一と再会する。大問屋の息子である信一は体が弱く、大学受験を延期して静養のためにやってきたのだ。信一に恋心を抱く千代の胸は高鳴るが、父親の源助は地元の青年・甚太郎を跡継ぎにと考え、千代との縁談を進めてしまう。
一方の信一にも親の決めた許婚がいたことを知って裏切られたと感じる千代に、母親は身分違いだからあきらめるようにと諭す。だが、信一と千代のお互いを想う気持ちは同じだった。千代は「立派な社会人になるまで待っていてくれ」という約束の言葉を胸に、信一の乗った連絡船を見送るのだった……。

前年(昭和30年)に同名映画主題歌「この世の花」でデビューし、多くのヒット曲を生んだ人気歌手・島倉千代子の初主演映画。風光明媚な大島を舞台に純朴な島の娘と東京の学生の淡い恋を描くストーリーで、主題歌のほか唱歌や民謡など島倉千代子の歌声が全編に流れる歌謡映画である。
日本映画の全盛期に流行したSP映画(ショートピクチャー)と思われる中編で、続編を想定してか物語としては消化不良に感じられる部分もあるが、千代が働く椿油工場を紹介した文化映画的な場面、新しい船に女性の髪の毛を祀る〝船霊様〟に見られる土着への関心、男女間や世代間の格差をめぐる葛藤など、オリジナル脚本ゆえに本多監督の多彩なモチーフが詰め込まれた作品となっている。

東京の人さようなら スチル
演出中の一コマ。自然の中で生きる人々を描いた
深田久彌の連作集「津軽の野づら」の一編「志乃の手紙」が
劇中の台詞で引用されている
東京の人さようなら スチル
お祭りの余興で歌う千代。歌手・島倉千代子としての
ステージ・パフォーマンスが見られる場面である
東京の人さようなら 本多猪四郎
連絡船の前にて
東京の人さようなら スチル
主演の島倉千代子と山田真二。山田真二は
「ジャンケン娘」「結婚のすべて」「銀座のお姐ちゃん」などに出演した二枚目スター。
歌手として紅白歌合戦にも出場した
東京の人さようなら スチル
源助(上田吉二郎)は新しい漁船の運転士となる
甚太郎(石原忠=佐原健二)を千代の婿に迎えようとしていた

Staff

製作   竹井諒
脚本   本多猪四郎
監督   本多猪四郎
撮影   芦田勇
美術   小川一夫
録音   長岡憲治
照明   猪原一郎
音楽   竹岡信幸
主題歌 「東京の人さようなら」
     コロムビアレコード
作詞   石本美由起
作曲   竹岡信幸
製作   原田禮輔
監督助手 船床定男
編集   小畑長蔵

出演   島倉千代子
     山田真二
     上田吉二郎
     本間文子
     東郷晴子
     八島恵子
     香川悠子
     大山健二
     

三田照子
伊東隆
石原忠(佐原健二)
佐田豊
河美智子
河崎堅男

製作       竹井諒
脚本       本多猪四郎
監督       本多猪四郎
撮影       芦田勇
美術       小川一夫
録音       長岡憲治
照明       猪原一郎
音楽       竹岡信幸
主題歌     「東京の人さようなら」
         コロムビアレコード
作詞       石本美由起
作曲       竹岡信幸
製作       原田禮輔
監督助手     船床定男
編集       小畑長蔵

出演       島倉千代子
         山田真二
         上田吉二郎
         本間文子
         東郷晴子
         八島恵子
         香川悠子
         大山健二
         三田照子
         伊東隆
         石原忠(佐原健二)
         佐田豊
         河美智子
         河崎堅男
         他

東京の人さようなら 本多猪四郎監督
東京の人さようなら スチル
大島ロケでのスタッフ記念写真