本多監督の代表作は誰が何といっても「オール怪獣大進撃」である!(鎌倉市 S.I様)

初めてお便りします。往年の東宝SF・怪獣映画、中でも本多監督の作品の大ファンである私は、この本多監督の公式サイトの存在を 今日初めて知り、大変うれしくなりました。本多監督の作品について語らせたらそれこそ夜が明けてしまいそうな私ですが、まず、 世間で不当に低く評価されている向きがある「オール怪獣大進撃」について書きたいと思います。

初めに誤解を恐れずに言いますが、この映画は「ゴジラ映画」としては最低である。それはそうだろう。過去の作品の名場面を利用し、
怪獣たちは全て少年の夢の中の存在に過ぎず、お世辞にもかっこいいとは言えない新怪獣ガバラのデザイン、喋るミニラ・・・。
作品以前に「ゴジラ映画」としての志の低さが悲しい。世間で評判の悪いのも頷ける。しかし、ちょっと待って欲しい。一回深呼吸でもしてから 「ゴジラ映画」としてではなく、一本の「映画」として見て欲しい。この映画の素晴らしさがきっとわかってもらえるはずです。
本多監督はご本人の言葉を借りれば、優れた「職業監督」であり、その卓越した演出力で様々なジャンルで手腕を発揮された。
「ゴジラ」のような重厚な反戦映画、「マタンゴ」のような心理スリラー、「キングコング対ゴジラ」のようなコメディタッチの怪獣映画・・・。
それこそ枚挙にいとまがない。でも本多監督が本当に撮りたかったのは、「オール怪獣」のような子供を主役にした楽しい作品ではなかったのか。
そう感じられるほど、この映画は全編に優しさが満ち溢れている。一郎くんをはじめ、おとうさん、おかあさんから刑事さんに至るまで登場人物 の眼差しがみな優しい。中でも発明おじさんのキャラクターは出色である。演ずる天本英世はそれ以前に怪獣映画で演じた役とは全く違ったキャラクター で新境地(?)とでも言うほど素晴らしい。子役たちも本多監督の演出の素晴らしさが透けて見えるようないきいきとした演技を披露している。
もしあなたがDVDなどの映像ソフトを持っているのなら、繰り返し画面の隅々まで見て欲しい。子供たちのひとりひとりが実に細かい表情や演技を しているのがわかって頂けるはずである。そして、私がこの映画で一番好きなのはラストの「おじさん、ごめんねー!」と言うセリフである。何回見ても 爽やかな余韻を味あわせてくれる。悪い事をした後、ただ逃げるのではなくキチンと謝る、そんな当たり前のようで忘れがちなことをあらためて思い起こさせてくれる、
素晴らしい、大好きな作品である。(未見の方のために敢えて細かい筋については触れなかった事をお断りしておきます)
映画には例え傑作でも一度みれば充分な映画と、何度見ても飽きず、見る度に新しい発見がある映画があるように感じるが、「オール怪獣」は明らかに後者である。
我が家では自分だけでなく、子供たちも妻もこの映画が大好きで繰り返し見ています。もしこれを読んで、ひとりでも興味を持ってくれる方がいて「オール怪獣」 を見て下さったり、今まであまり好きでなかった方が見直して下さったりすれば嬉しく思います。