こだまは呼んでいる / An Echo Calls You

1959年
東宝/モノクロ・東宝スコープ/87分
昭和34年1月22日公開

映画「こだまは呼んでいる」についての解説

──甲府盆地の一角、韮崎の駅と山の上の宿木村をつなぐ定期バスは単なる交通手段にとどまらず、メッセンジャーとして住民たちの生活の支えにもなっていた。その運転手・鍋山と車掌のタマ子は自他共に認める名コンビ。30を過ぎて独身の鍋山はふだんはガミガミと怒鳴ってばかりいるが、九十九折りの険しい山道で熟練した誘導ぶりを見せるタマ子は彼にとって、誰よりも頼りになる相棒だった。
そんなタマ子に地元の名家、平沢家の一人息子との縁談が持ち上がり、彼女に好意を持っていた鍋山は内心穏やかではない。一方、決まりきった毎日に飽き足らなくなっていたタマ子は「結婚は二人で一生懸命に作り上げていくものだ」という鍋山の言葉に励まされ、試験結婚のような形で平沢家の嫁入り修行に勤めるのだが……。

無愛想な中年のバス運転手と町の人気者のバスガールを主人公にしたコメディタッチの人情ドラマ。ミュージカルでも活躍した雪村いづみが主題歌・挿入歌を歌い(曲名等のクレジットなし)、由利徹・南利明・八波むと志・内海突破・若水ヤエ子ら昭和を代表する喜劇俳優陣が脇を固めている(由利徹の持ちネタ「カックン」のギャグも登場)。
男女を結びつける〝竜神祭り〟のシーンは、デビュー作「青い真珠」の大日様の祭りや「東京の人さようなら」の〝船霊様〟、さらには怪獣映画の祈りの大群舞にも通じる、自然と人間をつなぐ祭り=神事への関心を示すもの。また家柄を重んじる平沢家の母子(沢村貞子、藤木悠)の描写には、宇宙人によるマインド・コントロールと同じく〝人間の自由を否定し、型にはめてしまうことへの異議〟という本多作品の基本テーマが反映されている。

Staff

製作   市川久夫
脚本   棚田吾郎
監督   本多猪四郎
撮影   芦田勇
美術   北辰雄
録音   伴利也
     下永尚
照明   高島利雄
音楽   斉藤一郎
監督助手 長野卓

出演 池部良
   雪村いづみ
   沢村貞子
   飯田蝶子
   千石規子
   藤木悠
   左卜全
   沢村いき雄
   横山道代
   若水ヤエ子
   南利明
   由利徹

八波むと志
内海突破
小柳久子
笹るみ子
藤尾純
小桜京子
出雲八重子
伊東隆
馬野都留子

製作       市川久夫
脚本       棚田吾郎
監督       本多猪四郎
撮影       芦田勇
美術       北辰雄
録音       伴利也
         下永尚
照明       高島利雄
音楽       斉藤一郎
監督助手     長野卓

出演       池部良
         雪村いづみ
         沢村貞子
         飯田蝶子
         千石規子
         藤木悠
         左卜全
         沢村いき雄
         横山道代
         若水ヤエ子
         南利明
         由利徹
         八波むと志
         内海突破
         小柳久子
         笹るみ子
         藤尾純
         小桜京子
         出雲八重子
         伊東隆
         馬野都留子
         他

撮影用のバスをバックにしたスタッフと
出演者の記念撮影。
口げんかばかりしていた鍋山(池部良)と
タマ子(雪村いづみ)は、
お互いにかけがえのない
パートナーだったことに気づく
渋い二枚目の池部良が珍しく
喜劇的な演技に挑戦。
美空ひばり、江利チエミと共に
三人娘として活躍した雪村いづみの
勝ち気で明るいキャラクターは、
まさにザ・本多ヒロイン!