東宝/カラー・東宝スコープ/88分
昭和41年7月31日公開
(同時上映「ジャングル大帝」「つるのおんがえし」)
(解説)
──漁船・第三海神丸の沈没を皮切りにフランケンシュタインに似た巨大怪獣の目撃が相次ぎ、かつて京都のスチュワート研究所で育てられたフランケンシュタインの仕業だとの疑惑が深まる。彼の無実を信じるスチュワート博士と戸川アケミ、間宮雄三の3人は真相を突き止めるべく海と山の両面から調査を開始するが、折から羽田空港にフランケンシュタインが上陸して人間を襲うという緊急事態が発生した。
自衛隊はメーサー殺獣光線車と高圧放電によるL作戦を実施してフランケンシュタインの抹殺を図ったが、そこへもう一体のフランケンシュタインが出現。人間に育てられた心優しい山のフランケンシュタイン〈サンダ〉と、その細胞から分裂した凶暴な海のフランケンシュタイン〈ガイラ〉。クローンの兄弟ともいうべき二大怪獣は、やがて骨肉の死闘を繰り広げることに……。
前年公開の『フランケンシュタイン対地底怪獣(バラゴン)』と一部共通の設定をもつ姉妹編的な作品で、前作や『怪獣大戦争』に続いてアメリカのベネディクト・プロと提携し、ハリウッド俳優を主演に招いて製作。テレビ局も加わって邦画各社が競合する空前の怪獣ブームのさなか、メディアやイベントを通じた大量宣伝、アニメとの併映といった戦略を打ち出して人気を集めた。
内容面では前作でややユーモラスな脇役として描かれた自衛隊が大きくクローズアップされ、対怪獣用兵器による迎撃作戦や住民の避難誘導計画のリアルかつ詳細なシミュレーションが展開する一方、互いに好意を抱くスチュワート博士とアケミのロマンチックな描写が随所に織り込まれるなど、共に円熟の域に入った本多演出と円谷特撮のコンビネーションの醍醐味が満喫できる。『ガス人間第1号』の取調室の一輪挿しと同じく、本多監督が愛した花≠ェ印象的なアクセントに使われている点も見逃せない。
子供時代のサンダと母親のような存在のアケミ(水野久美)を演出中の本多監督。子供サンダの声を演じた木下華声は戦前から物真似、漫談で活躍した芸人。山本嘉次郎作品などで効果として動物の鳴き声を担当した
スチュワート博士の同僚、間宮雄三役の佐原健二、彼らに協力する東都大学の喜田教授を演じた中村伸郎と。佐原健二は当時『ウルトラQ』のヒットで子供たちに絶大な人気を誇り、中村伸郎は数々の舞台や小津映画、黒澤映画で知られる名優。『宇宙大怪獣ドゴラ』の宗方博士など、本多作品のシニカルな科学者もハマリ役だ
L作戦を指揮する橋本陸将補(田崎潤)と副官の風間二佐(桐野洋雄)ら幕僚たち。「ヘリコプターで目標の進行を止めろ」「重火器は各部隊とも現在位置にとどめる」といった沈着冷静、臨機応変の作戦遂行ぶりが圧巻で、田崎潤の重厚な演技が徹底した怪獣殲滅戦のリアリティを支えている
サンダとガイラの激闘は山間部から東京へと舞台を移し、サンダを救おうとするアケミはガイラに捕まってしまう……
出演
ラス・タンブリン(声=睦五郎)
水野久美
佐原健二
田崎潤
中村伸郎
伊藤久哉
田島義文
桐野洋雄
キップ・ハミルトン
山本廉
堤康久
ヘンリー・大川
森今日子
広瀬正一
沢村いき雄
野村明司
井上紀明
西條康彦
南弘子
坂本晴哉
津田光男
橘正晃
岡部正
渋谷英男
小宮康弘
関田裕
中島春雄
サンダの子供の声=木下華声
ガイラが女性歌手(キップ・ハミルトン)やアケミを掴むシーンで使われた実物大の手のモデルの上でおどける本多監督
スチュワート博士たちが細胞を採取するため、L作戦で飛び散ったガイラの肉片を探すシーンのロケ風景
スチュワート研究所のセットでの撮影風景。主演のラス・タンブリンは子役出身で、『親指トム』『ウエスト・サイド物語』『たたり』などに出演。テレビシリーズ『ツイン・ピークス』の怪演も記憶に新しい。声は海外ドラマ『逃亡者』の吹替で注目された睦五郎が担当している。右端は医師役で出演し、通訳を務めたヘンリー・大川