東宝/カラー・東宝スコープ/94分
昭和38年12月22日公開
(同時上映「香港クレージー作戦」)
(解説)
──広告写真の撮影中に奇怪な蒸気人間を目撃したカメラマンの旗中と助手の西部は、ムウ帝国工作隊23号と名乗る男に誘拐されかけた光国海運の楠見専務と秘書の真琴を救う。1万2千年前、大陸ごと太平洋に沈んだ古代文明の末裔であるムウ人たちは、地熱エネルギーを利用した高度な科学力で再び地上に君臨しようとしていた。
彼らは神宮司大佐が設計した旧日本海軍の秘密兵器・海底軍艦を恐れ、その所在をつきとめようと大佐の上官だった楠見や娘である真琴を狙ったのだ。終戦時に消息を絶った大佐が生きていると知った楠見たちは、ムウ帝国の侵攻から世界を救う切り札・海底軍艦の出撃を要請する使者となって基地のある島に向かう。だが、海底軍艦・轟天号を完成させた大佐の返事は意外なものだった……。
日本のSFの祖といわれる明治時代の作家・押川春浪の原作を、脚本の関沢新一がSF&オカルト知識を駆使して現代的にアレンジ。「緯度0大作戦」の原型にもなったコナン・ドイルの古典「マラコット海淵」の影響も感じられる波瀾万丈の冒険活劇だ。
音楽と共にプロセスを踏んで興奮を盛り上げていく発進シーンをはじめ、スーパーメカ・轟天号を迫力満点に描いた特撮はもちろん、ムウ帝国と地上側の多彩な人物が織りすドラマも見せ場が多い。特に愛国心に縛られた神宮司大佐が心情を変化させていく姿は、田崎潤の見事な演技に支えられて圧巻の一語。そこには本多監督の平和に対する理想と希望が込められている。
ムウ帝国の守護龍マンダ。お正月映画の干支にちなんだめでたい怪獣だが、意外と弱い。「怪獣総進撃」で再登場。同時上映は「海底軍艦」の短縮版だった
ムウ帝国皇帝役の小林哲子と。天本英世(猊下)、平田昭彦(23号)らと共に滅びゆく民族の誇りと悲哀を体現して強烈な印象を残した。ほかに87分署シリーズの映画化「恐怖の時間」などに出演
轟天号司令室のセットにて準備中の一コマ
「実話之友」の記者、実はムウの工作員である海野(佐原健二)が楠見(上原謙)を訪ねてくるシーンの撮影風景
出演者
高島忠夫
藤山陽子
藤木悠
佐原健二
上原謙
小泉博
田崎潤
田島義文
平田昭彦
天本英世
藤田進
高田稔
伊藤久哉
小林哲子
北あけみ
長谷川弘
桐野洋雄
沢村いき雄
雨宮貞子
中村哲
中山豊
大友伸
津田光男
坂本晴哉
東宝芸能学校
他
ムウに囚われた旗中(高島忠夫)たちが皇帝を人質にして脱出を図るシーンを演出中。気密服に着替える際、皇帝が自ら衣装を取る演技は撮影段階で加えられたもので、皇帝のプライドと屈辱感を端的に表現している
東宝芸能学校の生徒ら数百人のエキストラを動員したムウ民族の大群舞シーン。東宝撮影所のステージの広さがわかる
本編スタッフとキャストの記念スナップ