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「港へ来た男」
昭和27年、まだデビューしたばかりで初めての地方ロケ。宮城県女川という鯨漁の基地だった。新人なので育ててやろうという本多監督の優しさと、三船さんとの共演の嬉しさと、町中にしみこんでいる鯨の強烈な臭いが印象に残っている。

「おえんさん」
映画界が好況の波に乗って浮かれていた頃の為か、ひっそりと作られていたが、本多監督はこういう地味な人情話で本領を発揮される方だったのではないかと思う。
新派の大御所先代水谷八重子さんの一人息子の役で緊張した。築地の魚河岸のロケで水谷さんの長靴姿が印象的だった。見る機会がなかなかないのが残念。

「モスラ」
沢山の先輩や名優と一緒で、大規模なロケをした贅沢な作品という印象だが、蛾をモデルにした怪獣というイメージが沸かず、本多監督も苦笑いをしながら説明していた覚えがある。40何年後に“東京SOS”で同じ人物がそのまま年を取った役で出演するとは思わなかった。

「マタンゴ」
出演した本多監督作品の中で一番好きな映画だ。個性のある男女のグループ芝居で、演劇的で楽しい雰囲気だった。本多監督も生き生きと仕事をされていたし、それぞれの役の人物も良く生かされていたと思う。


本多猪四郎監督は、俳優から見ると怒った顔や不愉快な顔を見せた事のない温和で誠実な監督で、演技指導も俳優が持つそれぞれの力量と持ち味に応じて、自然で無理のない演技を求めたとても演技しやすい監督さんだった。

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小泉博